『ヴィック・ムニーズ / ごみアートの奇跡』がくれた“きっかけ”

title「これは観なきゃ!」って思ってたドキュメンタリー映画、『ヴィック・ムニーズ / ごみアートの奇跡』を観てきました。

チケットを購入したら、番号が7。「お、ラッキーセブン」と思ったら、何のことはない、劇場入ってみたらお客さんが7人しかいなかった……。映画が始まってから何人か途中で入ってきたので、それでも10名くらい。

映画のタイトルになっている「ヴィック・ムニーズ」っていうのは、ブラジル出身でニューヨークで成功した現代アーティスト。そのヴィックが、故郷ブラジルのゴミ処理場で、リサイクルのためにゴミを拾うのを生業とする“カタドール”と呼ばれる人たちと共にアート作品をつくるってのがこのドキュメンタリー映画のストーリー。

世界最大級のごみ処理場「ジャウジン・グラマーショ」で、ゴミやがらくたにまみれて作業をする“カタドール”は社会の底辺にいるともいえる人たちですが、彼らは毅然と誇りを持って仕事をこなしている。その姿は、ある意味牧歌的でさえあって、まるで大昔の採集民族の生活のような。ここで拾うものは、食べ物ではなく、換金できるリサイクル品だという違いはあるけど。

みんなまじめで善良な人たちなのだろうな、と。ドラッグの密売人や娼婦が周りにいるなかで、あえてゴミ処理上で働くことを選んだ人たち。
たぶんきっと、ちょっとだけ世間と歯車がかみ合わなかっただけなのかもしれない。

ふと、自分がホームレスに片足突っ込んで職探しをしていた頃のことを思い出します。

働く気があるのに、社会が居場所を提供してくれない。僕はアメリカの大学を卒業した直後、仕事が見つからないまま西海岸を1ヶ月くらいホームレス状態でさまよってました。車で寝たり、安ホテルに泊まったりしながら、就職活動。コネもツテもなく、ただひたすら開かないドアと叩き続けているような毎日。
僕は基本的に根は楽天家で、どんなところにでも身一つで飛び込んでいくたちなのですが、この時ばかりは八方ふさがりで参りました。
出口のない迷路に閉じ込められたような気分で悶々としている中、たまたま受けた面接の知り合いの人を紹介され、なんともあっけなく宝石デザイン会社のデジタル広告部門に配属され、アクセサリーの写真を撮る仕事に就くことができたのは、放浪を始めてから約1か月後。初めて給料を受け取った時、僕の所持金は200ドル(約2万円)くらい。日本に帰国するための飛行機代にも足りず、ホントにギリギリでした。

ちょっとしたきっかけなんだろうな、と。チャンスは雲のようにフワフワといつでも流れてくる。でも、上を向いて眺めているだけでは遠い夢で終わってしまうので、とにかく雲に近づけるように、登ってみること。きちんと努力をして、かつ運が良ければ雲に到達することができる。下から見上げる雲とは違っているかもしれないけど、確かに確実に雲に包まれてる実感は味わうことができる。

ヴィックと一緒にアート作品制作に参加し、ポートレートになった人たちは、その後様々な道を進みました。ちょっとしたきっかけが、その人たちの人生を変えたということ。それは、ヴィックが変えたのではなく、変わりたいという本人たちの意思。アート制作は、あくまでそのきっかけだったのだろうな、と。

自分の人生を振り返ってみると、僕にもそういう人生の転機になるような「きっかけ」がいくつもあったことに気付かされます。そして多分、このドキュメンタリー映画を観たことも、なにかしら僕の人生に影響を与えるきっかけになるのかもしれない。

そんなことを考えつつ。

『ヴィック・ムニーズ / ごみアートの奇跡』
http://gomiart.net/


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